[家を持ち替える/BUILD] Eng
2008
不要となった実家,衣装ケース,ガラス,洗濯用品,水槽,衛星アンテナ,その他
7×5.5×2.7m
表参道画廊,東京
2008.02.04-02.09
撮影:山本糾/YAMAMOTO Tadasu


細い金属パイプが縦横につながりながら室内の空間をのびていた。あ
る部分は壁や床や天井の配管と連結しているようにも見えて、またいく
つかの先端には、針金のハンガーや旧いクリーナー、カバーなどが接続
して、壁に取り付けられた窓格子や床の破片などとともに構成的に作ら
れた空間に日常や記憶への手がかりを添えていた。初めて見た利部志穂
(かがぶ・しほ)の個展は、鮮明なその才能のスパークを伝えた。半年
後、区画整理で取り壊される彼女の実家のビルの解体過程に介入する試
みに立ち会った。防塵マスクとヘルメット、作業着姿の作家は、たちま
ち瓦礫と化した物質と記憶を再生するように、早い夕日も忘れて一心不
乱に建材のかけらをブリコラージュしていた。オシリス神話、構造人類
学、建築、ポスト・ミニマル、マッタ=クラーク・・・わたしの
シナプスにたくさんの信号の火が点滅していた。  

鷹見明彦(美術評論家)