[足踏み]  Eng
2008
金属,鏡,写真,その他,音 50分間
4.6×5×7m(室内)
-サスティナブルアートプロジェクト・事の縁-展,旧坂本小学校,東京
2008.10.18-11.8
撮影:山本糾/YAMAMOTO Tadasu


「場所・言葉・身体」
ー横糸についてー


ここで流れている音は、台東福祉会館にあるつばさ工房の織り機の音である。
「さをり織り」という織り方で織られる色鮮やかな織物は誰でも簡単に織ることが
できる方法で、縦糸を決めれば横糸は何を選んでも、失敗をしてもまたそれが模様
の一部として取り込まれる。
その織り機はそれぞれの体にあった形に改良しており、この工房では手が使えない人は足で、
足が使えない人は足の代わりにおもりをつける。
その重りの鞄や、水の入ったペットボトルが印象的であった。

私は彫刻家として身体に障害を持つ人達を好奇心の眼差しで見始めた。
それ以外のいくつかのきっかけを介して。
体の機能の違いによる、視点の位置や身振りについて観察する。
しかし身体に障害を持つ者と一つに言ってもその障害により、全く違うことにきづかされる。
そして、私も無論 例外ではないことに。
工房に通う人達は それぞれ の障害の違いをよく理解し、声をかけあい、
それぞれの時間の進め方によって行動する。

それぞれ 人間という形のひとつの個体はどう運動するのか。
何によって横糸の色や素材、織り方の模様を決定していくのか。
作品となる時はどこにあるのだろうか。

芸術が社会一般のルールや 街の中の人達と良い関係を築くかは、私にはよくわからない。
ただ、常に作品とは別の、自身のつくり手としての身体を決定づける背景、
状況への興味から切り離すことができない。 芸術の諸問題についてとは全く関係のないことだという考えを浮かばせながら。

2008.10
利部志穂