[止まった水] Eng
2010
水、ベニヤ、単管パイプ、DVD、靴、赤、金、雑草、その他
9.8×3.6×3m室内
2010.10.02-10.29
island,柏,千葉
撮影:若林勇人/利部志穂


「止まった水」

止まった水
彼は、川を渡り、仕事へ向かう。

毎朝決まった時間に川を渡る。
今日も無事に一日が過ぎていきますように。
見送る家族は、この星にどれだけいるのだろうか。

一つ橋を越える。国が変わる。
西(ブダ)から見た東(ペスト)、東(ペスト)から見た西(ブダ)。
東京から見る神奈川、神奈川から見る東京。
いくつもの橋を越える。
大陸を横断する。
12時間を過ぎて、またもとの場所へ帰る。
目の前の、自室の窓からの通り道を。
起きている様々な動きを。

わたしにしか見る事のできない事を
一生のうち、一度も会う事の無い人へ

ここにしかないもの。
圧倒的なローカリティーを持って、見る事の無い世界へ。
ずっと、遠くへ、大きく放つ。

今日も無事に戻れますように。
川を渡って、帰ってこられますように。
沈んでいく星の真ん中へ。
今、これを 気づくため
見るための準備を、いつでも、用意する。


2010.10.02
利部志穂


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覆われた まぶた
夜、暗くなり、眠るのが怖い。
永遠に目覚めないのではないか。
明くる日は、何もかも変わり、
全く知らない世界が
やってくる。

一瞬も同じ時や、同じ身体を持つ事は
不可能なのに。
目に写る世界において
明日という尺度が、
取りつく島などないはずなのに。

くだらない 歪められた幻想。

Couch 寝椅子というものがあるらしい。
日本だと、かつての縁側だろうか。
今だとパイプ椅子にあたるだろうか。
ほどよく狭く、ほどよく固い背中の下。

充実した仮眠をとる。
多くの夜を。明くる日への
日光に、照らされた影を。
乗り越えたい。という
くだらない幻想を外し、
また、
繰り返すために

2010.11.03 
利部志穂