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2013
グループ展 [アーティスト・ファイル2013ー現代の作家たちー]
2013.01.23-04.01
国立新美術館, 東京
撮影:若林勇人
タマがわ、たった火
ガサゴソと紙を丸める音がする。
視界の中に、蠢く丸い小さな人がいる。
一人でいることを恐れていた自分が、
文字通り一人でいる時が無くなった。
頭の中や、目の前の景色をコントロールして、
別の世界へ向かう。
川の上を灯火が流れていくように、
誰もいない場所へ。
会う事の無い人へ。違う時を生きた人へ。
何度も、繰り返し聞いた
ママのハハの ママとハハへ。
真っ赤な風が吹く、
凍りついた冷たい熱風が世界を占拠する。
髪を引っぱられ、顔を上げる。
初めの時を共有する小さな人が、
立つ手を取って
大地を作る土の虫や種は、巡られる水は
食べられない、匂わない。
色鮮やかな、甘く濃い野菜に
大きな、真っ白な固い容器。
どこまでも手にしたいのか。
何も必要なものはありません。
私たちは進化しています。
このままの暮らしを手放す事はありません。
ママとハハへ。
一人であることなどありえません。
孤独な瞬間など存在しないのです。
それでも見えずらく、忘れていきます。
すべてが、消える前に
出来るだけ多く、気がついていたいのです。
覚えておきたいのです。眺めていたいのです。
とても長く、瞬く間に
見つめていたいのです。
2013.01.21
利部志穂